立ち上がった私は、
机の上にあるラブラブメールの
大量コピーの束を指さし
「要ります?」と聞きました。
ゴリエが
「いえ・・・。いいです」と
首をかすかに横に振ったので
持って帰ることにしました。
「行こう。」
子どもたちを連れて、部屋を出ました。
ゴリエも慌てて
慰謝料の請求書をたたんで手に取り、
ついて来ました。
エレベーターホールまで来ると、
背筋を伸ばし、振り返り、
ゴリエに向かって
何事もなかったように
「 ありがとうございました。」
と言いました。
すぐ横の事務所の入り口からは
こちらを見ている人の姿が見えました。
ゴリエも平静を装い
「 ありがとうございましたぁ。」
と続けました。
私は心の中で
「チッ…」と思いながらも
「 では、よろしくお願いします。」
とだけ言いました。
「 はい、お願いしまーす。」
そう答えるゴリエに
冷たい視線をくれてから、
私たちはエレベーターに
乗り込みました。
閉まるドアの向こうに、
ペコペコとお辞儀をする
ゴリエの姿が見えました。
ドアが閉まると、
ほっとしましたが、まだ
心臓がどきどきしていました。
・・・
とりあえず、やった・・・!
頑張ったよ・・・私・・・!!
建物の外に出ると、
子どもたちも明るい表情に
戻りました。
「ママ、かっこ良かった。」
「そう?」
私も、やっと緊張から解放され、
ほっとしました。
「でも・・・。」
子どもたちがぽつりと言いました。
「 でも、パパ、なんで
あんな人と・・・。
ママの方がずっと
可愛いのに・・・。」
「 なんかあの人に似てた。
ガンバレルーヤの人・・・。
(よしこ)」
そう話して私たちはやっと、笑いました。